》ばかりで、流れるのではありません、どんより鼠色《ねずみいろ》に淀《よど》んだ岸に、浮きもせず、沈みもやらず、末始終《すえしじゅう》は砕けて鯉《こい》鮒《ふな》にもなりそうに、何時頃《いつごろ》のか五、六本、丸太が浸《ひた》っているのを見ると、ああ、切組《きりく》めば船になる。繋合《つなぎあ》わせば筏《いかだ》になる。しかるに、綱も棹《さお》もない、恋の淵《ふち》はこれで渡らねばならないものか。
 生身《いきみ》では渡られない。霊魂《たましい》だけなら乗れようものを。あの、樹立《こだち》に包まれた木戸《きど》の中には、その人が、と足を爪立《つまだ》ったりなんぞして。
 蝶《ちょう》の目からも、余りふわふわして見えたでござろう。小松の中をふらつく自分も、何んだかその、肩から上ばかりに、裾《すそ》も足もなくなった心地、日中《ひなか》の妙《みょう》な蝙蝠《こうもり》じゃて。
 懐中《かいちゅう》から本を出して、
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蝋光高懸照紗空《ろうこうたかくかかりしゃをてらしてむなし》、    花房夜搗紅守宮《かぼうよるつくこうしゅきゅう》、
|象口吹香※[#「搨のつくり+毛」、62
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