りしましょうで。
 一日《あるひ》晩方《ばんがた》、極暑《ごくしょ》のみぎりでありました。浜の散歩から返ってござって、(和尚《おしょう》さん、些《ちっ》と海へ行って御覧なさいませんか。綺麗《きれい》な人がいますよ。)
(ははあ、どんな、貴下《あなた》、)
(あの松原の砂路《すなじ》から、小松橋《こまつばし》を渡ると、急にむこうが遠目金《とおめがね》を嵌《は》めたように円《まる》い海になって富士《ふじ》の山が見えますね、)
 これは御存じでございましょう。」
「知っていますとも。毎日のように遊びに出ますもの、」
「あの橋の取附《とッつ》きに、松の樹で取廻《とりまわ》して――松原はずッと河を越して広い洲《す》の林になっておりますな――そして庭を広く取って、大玄関《おおげんかん》へ石を敷詰《しきつ》めた、素ばらしい門のある邸《やしき》がございましょう。あれが、それ、玉脇《たまわき》の住居《すまい》で。
 実はあの方《ほう》を、東京の方《かた》がなさる別荘を真似《まね》て造ったでありますが、主人が交際《つきあい》ずきで頻《しきり》と客をしまする処《ところ》、いずれ海が、何よりの呼物《よびもの》
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