て、坐っていて商売が出来るようになりました、高利《こうり》は貸します。
 どかとした山の林が、あの裸になっては、店さきへすくすくと並んで、いつの間にか金《かね》を残しては何処《どこ》へか参る。
 そのはずでござるて。
 利のつく金子《かね》を借りて山を買う、木を伐《き》りかけ、資本《もとで》に支《つか》える。ここで材木を抵当《ていとう》にして、また借りる。すぐに利がつく、また伐りかかる、資本《もとで》に支《つか》える、また借りる、利でござろう。借りた方は精々《せっせっ》と樹《き》を伐《き》り出して、貸元《かしもと》の店へ材木を並べるばかり。追っかけられて見切って売るのを、安く買い込んでまた儲《もう》ける。行ったり、来たり、家の前を通るものが、金子《かね》を置いては失せるのであります。
 妻子眷属《さいしけんぞく》、一時《いっとき》にどしどしと殖《ふ》えて、人は唯《ただ》、天狗《てんぐ》が山を飲むような、と舌を巻いたでありまするが、蔭《かげ》じゃ――その――鍬《くわ》を杖《つえ》で胴震《どうぶる》いの一件をな、はははは、こちとら、その、も一ツの甕《かめ》の朱《しゅ》の方だって、手を押《お
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