。
開《あ》けかけた蓋を慌《あわ》てて圧《おさ》えて、きょろきょろと其処《そこ》ら※[#「目+句」、第4水準2−81−91]《みまわ》したそうでございますよ。
傍《そば》にいて覗《のぞ》き込んでいた、自分の小児《こども》をさえ、睨《にら》むようにして、じろりと見ながら、どう悠々《ゆうゆう》と、肌《はだ》なぞを入れておられましょう。
素肌《すはだ》へ、貴下《あなた》、嬰児《あかんぼ》を負《おぶ》うように、それ、脱いで置いたぼろ半纏《ばんてん》で、しっかりくるんで、背負上《しょいあ》げて、がくつく腰を、鍬《くわ》を杖《つえ》にどッこいなじゃ。黙っていろよ、何んにも言うな、きっと誰にも饒舌《しゃべ》るでねえぞ、と言い続けて、内《うち》へ帰って、納戸《なんど》を閉切《しめき》って暗くして、お仏壇《ぶつだん》の前へ筵《むしろ》を敷いて、其処《そこ》へざくざくと装上《もりあ》げた。尤《もっと》も年が経《た》って薄黒くなっていたそうでありますが、その晩から小屋は何んとなく暗夜《やみよ》にも明るかった、と近所のものが話でござって。
極性《ごくしょう》な朱《しゅ》でござったろう、ぶちまけた甕《か
前へ
次へ
全95ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング