《ほりあ》てました。海の中でも紅《べに》色の鱗《うろこ》は目覚《めざま》しい。土を穿《ほ》って出る水も、そういう場合には紫より、黄色より、青い色より、その紅色が一番見る目を驚かせます。
はて、何んであろうと、親仁殿《おやじどの》が固くなって、もう二、三度|穿《ほ》り拡げると、がっくり、うつろになったので、山の腹へ附着《くッつ》いて、こう覗《のぞ》いて見たそうにござる。」
十一
「大蛇《だいじゃ》が顋《あぎと》を開《あ》いたような、真紅《まっか》な土の空洞《うつろ》の中に、づほらとした黒い塊《かたまり》が見えたのを、鍬《くわ》の先で掻出《かきだ》して見ると――甕《かめ》で。
蓋《ふた》が打欠《ぶっか》けていたそうでございますが、其処《そこ》からもどろどろと、その丹色《にいろ》に底澄《そこす》んで光のある粘土《ねばつち》ようのものが充満《いっぱい》。
別に何んにもありませんので、親仁殿《おやじどの》は惜気《おしげ》もなく打覆《ぶっかえ》して、もう一箇《ひとつ》あった、それも甕で、奥の方へ縦《たて》に二ツ並んでいたと申します――さあ、この方が真物《ほんもの》でござった
前へ
次へ
全95ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング