人ばッかいるだから、」
「その女中衆についてさ。私《わたし》がね、今|彼処《あすこ》の横手をこの路へかかって来ると、溝の石垣の処《ところ》を、ずるずるっと這《は》ってね、一匹いたのさ――長いのが。」
二
怪訝《けげん》な眉を臆面《おくめん》なく日に這《は》わせて、親仁《おやじ》、煙草入《たばこいれ》をふらふら。
「へい、」
「余り好物《こうぶつ》な方《ほう》じゃないからね、実は、」
と言って、笑いながら、
「その癖《くせ》恐《こわ》いもの見たさに立留《たちど》まって見ていると、何《なん》じゃないか、やがて半分ばかり垣根へ入って、尾を水の中へばたりと落して、鎌首《かまくび》を、あの羽目板《はめいた》へ入れたろうじゃないか。羽目《はめ》の中は、見た処《ところ》湯殿《ゆどの》らしい。それとも台所かも知れないが、何しろ、内《うち》にゃ少《わか》い女たちの声がするから、どんな事で吃驚《びっくり》しまいものでもない、と思います。
あれッきり、座敷へなり、納戸《なんど》へなりのたくり込めば、一も二もありゃしない。それまでというもんだけれど、何処《どこ》か板《いた》の間《ま》に
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