がりかど》の青大将と、この傍《かたわら》なる菜の花の中の赤楝蛇《やまかがし》と、向うの馬の面《つら》とへ線を引くと、細長い三角形の只中《ただなか》へ、封じ籠められた形になる。
奇怪なる地妖《ちよう》でないか。
しかし、若悪獣囲繞《にゃくあくじゅういにょう》、利牙爪可怖《りげしょうかふ》も、※[#「虫+元」、16−3]蛇及蝮蝎《がんじゃぎゅうふくかつ》、気毒煙火燃《けどくえんかねん》も、薩陀《さった》彼処《かしこ》にましますぞや。しばらくして。……
四
のんきな馬士《まご》めが、此処《ここ》に人のあるを見て、はじめて、のっそり馬の鼻頭《はなづら》に顕《あらわ》れた、真正面《ましょうめん》から前後三頭一列に並んで、たらたら下《お》りをゆたゆたと来るのであった。
「お待遠《まちどお》さまでごぜえます。」
「はあ、お邪魔さまな。」
「御免《ごめん》なせえまし。」
と三人、一人々々《ひとりひとり》声をかけて通るうち、流《ながれ》のふちに爪立《つまだ》つまで、細くなって躱《かわ》したが、なお大《おおい》なる皮の風呂敷に、目を包まれる心地であった。
路《みち》は一際《ひと
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