うつもん》を漏《も》らした、未来があるものと定《さだま》り、霊魂の行末《ゆくすえ》が極《きま》ったら、直ぐにあとを追おうと言った、言《ことば》の端《はし》にも顕《あらわ》れていた。
唯《ただ》その有耶無耶《うやむや》であるために、男のあとを追いもならず、生長《いきなが》らえる効《かい》もないので。
そぞろに門附《かどづけ》を怪しんで、冥土《めいど》の使《つかい》のように感じた如きは幾分か心が乱れている。意気張《いきばり》ずくで死んで見せように到っては、益々《ますます》悩乱《のうらん》のほどが思い遣《や》られる。
また一面から見れば、門附《かどづけ》が談話《はなし》の中に、神田辺《かんだへん》の店で、江戸紫《えどむらさき》の夜あけがた、小僧が門《かど》を掃《は》いている、納豆《なっとう》の声がした……のは、その人が生涯の東雲頃《しののめごろ》であったかも知れぬ。――やがて暴風雨《あらし》となったが――
とにかく、(ことづけ)はどうなろう。玉脇の妻は、以《もっ》て未来の有無を占《うらな》おうとしたらしかったに――頭陀袋《ずだぶくろ》にも納めず、帯にもつけず、袂《たもと》にも入れず、
前へ
次へ
全57ページ中50ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング