を射《い》よ。※[#「栩のつくり/廾」、第3水準1−90−29]《げい》すなはち弓《ゆみ》を引《ひ》いて射《い》て、誤《あやま》つて右《みぎ》の目《め》にあつ。首《かうべ》を抑《おさ》へて愧《は》ぢて終身不忘《みををはるまでわすれず》。術《じゆつ》や、其《そ》の愧《は》ぢたるに在《あ》り。
 また陽州《やうしう》の役《えき》に、顏息《がんそく》といへる名譽《めいよ》の射手《しやしゆ》、敵《てき》を射《い》て其《そ》の眉《まゆ》に中《あ》つ。退《しりぞ》いて曰《いは》く、我無勇《われゆうなし》。吾《わ》れの其《そ》の目《め》を志《こゝろざ》して狙《ねら》へるものを、と此《こ》の事《こと》左傳《さでん》に見《み》ゆとぞ。術《じゆつ》や、其《そ》の無勇《ゆうなき》に在《あ》り。
 飛衞《ひゑい》は昔《いにしへ》の善《よ》く射《い》るものなり。同《おな》じ時《とき》紀昌《きしやう》といふもの、飛衞《ひゑい》に請《こ》うて射《しや》を學《まな》ばんとす。教《をしへ》て曰《いは》く、爾《なんぢ》先《まづ》瞬《またゝ》きせざることを學《まな》んで然《しか》る後《のち》に可言射《しやをいふべし》。
 
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