せわ》をしながら笑《わら》つたが、何《なに》を祕《かく》さう、唯今《たゞいま》の雲行《くもゆき》に、雷鳴《らいめい》をともなひはしなからうかと、氣遣《きづか》つた處《ところ》だから、土地《とち》ツ子《こ》の天氣豫報《てんきよはう》の、風《かぜ》、晴《はれ》、に感謝《かんしや》の意《い》を表《へう》したのであつた。
すぐ女中《ぢよちう》の案内《あんない》で、大《おほき》く宿《やど》の名《な》を記《しる》した番傘《ばんがさ》を、前後《あとさき》に揃《そろ》へて庭下駄《にはげた》で外湯《そとゆ》に行《ゆ》く。此《こ》の景勝《けいしよう》愉樂《ゆらく》の郷《きやう》にして、内湯《うちゆ》のないのを遺憾《ゐかん》とす、と云《い》ふ、贅澤《ぜいたく》なのもあるけれども、何《なに》、青天井《あをてんじやう》、いや、滴《したゝ》る青葉《あをば》の雫《しづく》の中《なか》なる廊下《らうか》續《つゞ》きだと思《おも》へば、渡《わた》つて通《とほ》る橋《はし》にも、川《かは》にも、細々《こま/″\》とからくりがなく洒張《さつぱ》りして一層《いつそう》好《い》い。本雨《ほんあめ》だ。第一《だいいち》、馴《な
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