る》を寄《よ》せて、蘆摺《あしず》れに汀《みぎは》が低《ひく》い。彳《たゝず》めば、暖《あたゝか》く水《みづ》に抱《いだ》かれた心地《こゝち》がして、藻《も》も、水草《みづくさ》もとろ/\と夢《ゆめ》が蕩《とろ》けさうに裾《すそ》に靡《なび》く。おゝ、澤山《たくさん》な金魚藻《きんぎよも》だ。同町内《どうちやうない》の瀧君《たきくん》に、ひと俵《たはら》贈《おく》らうかな、……水上《みなかみ》さんは大《おほき》な目《め》をして、二七《にしち》の縁日《えんにち》に金魚藻《きんぎよも》を探《さが》して行《ゆ》く。……
 私《わたし》は海《うみ》の空《そら》を見《み》た。輝《かゞや》く如《ごと》きは日本海《につぽんかい》の波《なみ》であらう。鞍掛山《くらかけやま》、太白山《たいはくざん》は、黛《いれずみ》を左右《さいう》に描《ゑが》いて、來日《くるひ》ヶ峰《みね》は翠《みどり》なす額髮《ひたひがみ》を近々《ちか/″\》と、面《おも》ほてりのするまで、じり/\と情熱《じやうねつ》の呼吸《いき》を通《かよ》はす。緩《ゆる》い流《ながれ》は浮草《うきぐさ》の帶《おび》を解《と》いた。私《わたし》の
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