き出《で》た出額《おでこ》の尻《しり》すぼけ、情《なさけ》を知《し》らず故《ことさ》らに繪《ゑ》に描《か》いたやうなのが、ピイロロロピイと仰向《あふむ》いて吹《ふ》いて、すぐ、ぐつたりと又《また》俯向《うつむ》く。鍵《かぎ》なりに町《まち》を曲《まが》つて、水《みづ》の音《おと》のやゝ聞《き》こえる、流《ながれ》の早《はや》い橋《はし》を越《こ》すと、又《また》道《みち》が折《を》れた。突當《つきあた》りがもうすぐ山懷《やまふところ》に成《な》る。其處《そこ》の町屋《まちや》を、馬《うま》の沓形《くつがた》に一廻《ひとまは》りして、振返《ふりかへ》つた顏《かほ》を見《み》ると、額《ひたひ》に隱《かく》れて目《め》の窪《くぼ》んだ、頤《あご》のこけたのが、かれこれ四十ぐらゐな年《とし》であつた。
うか/\と、あとを歩行《ある》いた方《はう》は勝手《かつて》だが、彼《かれ》は勝手《かつて》を超越《てうゑつ》した朝飯前《あさめしまへ》であらうも知《し》れない。笛《ふえ》の音《ね》が胸《むね》に響《ひゞ》く。
私《わたし》は欄干《らんかん》に彳《たゝず》んで、返《かへ》りを行違《ゆきちが》
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