《とよをか》から來《く》る間《あひだ》、夕雲《ゆふぐも》の低迷《ていめい》して小浪《さゝなみ》に浮織《うきおり》の紋《もん》を敷《し》いた、漫々《まん/\》たる練絹《ねりぎぬ》に、汽車《きしや》の窓《まど》から手《て》をのばせば、蘆《あし》の葉越《はごし》に、觸《さは》ると搖《ゆ》れさうな思《おもひ》で通《とほ》つた。旅《たび》は樂《たのし》い、又《また》寂《さび》しい、としをらしく成《な》ると、何《なに》が、そんな事《こと》。……ぢきその飛石《とびいし》を渡《わた》つた小流《こながれ》から、お前《まへ》さん、苫船《とまぶね》、屋根船《やねぶね》に炬燵《こたつ》を入《い》れて、美《うつく》しいのと差向《さしむか》ひで、湯豆府《ゆどうふ》で飮《の》みながら、唄《うた》で漕《こ》いで、あの川裾《かはすそ》から、玄武洞《げんぶどう》、對居山《つゐやま》まで、雪見《ゆきみ》と云《い》ふ洒落《しやれ》さへあります、と言《い》ふ。項《うなじ》を立《た》てた苫《とま》も舷《ふなばた》も白銀《しろがね》に、珊瑚《さんご》の袖《そで》の搖《ゆ》るゝ時《とき》、船《ふね》はたゞ雪《ゆき》を被《かつ》いだ翡
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