女客
泉鏡花
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)階子段《はしごだん》から
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)瞳|清《すず》しゅう
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》り、
−−
一
「謹さん、お手紙、」
と階子段《はしごだん》から声を掛けて、二階の六畳へ上《あが》り切らず、欄干《てすり》に白やかな手をかけて、顔を斜《ななめ》に覗《のぞ》きながら、背後向《うしろむ》きに机に寄った当家の主人《あるじ》に、一枚を齎《もた》らした。
「憚《はばか》り、」
と身を横に、蔽《おお》うた燈《ともしび》を離れたので、玉《ぎょく》ぼやを透かした薄あかりに、くっきり描き出《いだ》された、上り口の半身は、雲の絶間の青柳《あおやぎ》見るよう、髪も容《かたち》もすっきりした中年増《ちゅうどしま》。
これはあるじの国許《くにもと》から、五ツになる男の児《こ》を伴うて、この度上京、しばらく
次へ
全21ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング