降續《ふりつゞ》いたり、窮境《きうきやう》目《め》も當《あ》てられない憂目《うきめ》に逢《あ》ふなんどの場合《ばあひ》には、教師《けうし》の情《なさけ》で手當《てあて》の出《で》ることさへある、院《ゐん》といふが私立《しりつ》の幼稚園《えうちゑん》をかねた小學校《せうがくかう》へ通學《つうがく》するので。
今《いま》大塚《おほつか》の樹立《こだち》の方《はう》から颯《さつ》と光線《くわうせん》を射越《いこ》して、露《つゆ》が煌々《きら/\》する路傍《ろばう》の草《くさ》へ、小《ちひ》さな片足《かたあし》を入《い》れて、上《うへ》から下《お》りて來《く》る者《もの》の道《みち》を開《ひら》いて待構《まちかま》へると、前《まへ》とは違《ちが》ひ、歩《ほ》を緩《ゆる》う、のさ/\と顯《あら》はれたは、藪龜《やぶがめ》にても蟇《ひき》にても……蝶々《てふ/\》蜻蛉《とんぼ》の餓鬼大將《がきだいしやう》。
駄々《だゞ》を捏《こ》ぬて、泣癖《なきくせ》が著《つ》いたらしい。への字《じ》形《なり》の曲形口《いがみぐち》、兩《りやう》の頬邊《ほゝべた》へ高慢《かうまん》な筋《すぢ》を入《い》れて、
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