澁《しぶ》を刷《は》いたやうな顏色《がんしよく》。ちよんぼりとある薄《うす》い眉《まゆ》は何《どう》やらいたいけな造《つくり》だけれども、鬼薊《おにあざみ》の花《はな》かとばかりすら/\と毛《け》が伸《の》びて、惡《わる》い天窓《あたま》でも撫《な》でてやつたら掌《てのひら》へ刺《さゝ》りさうでとげ/\しい。
着物《きもの》は申《まを》すまでもなし、土《つち》と砂利《じやり》と松脂《まつやに》と飴《あめ》ン棒《ぼう》を等分《とうぶん》に交《ま》ぜて天日《てんぴ》に乾《かわか》したものに外《ほか》ならず。
勿論《もちろん》素跣足《すはだし》で、小脇《こわき》に隱《かく》したものを其《その》まゝ持《も》つて出《で》て來《き》たが、唯《と》見《み》れば、目笊《めざる》の中《なか》充滿《いつぱい》に葉《は》ながら撮《つ》んだ苺《いちご》であつた。
童《わつぱ》は猿眼《さるまなこ》で稚《ちひさ》いのを見《み》ると苦笑《にがわらひ》をして、
「おゝ! 吉公《きちこう》か、ちよツ、」
と舌打《したうち》、生意氣《なまいき》なもの言《い》ひで、
「驚《おどろ》かしやがつた、厭《いや》になるぜ。
前へ
次へ
全10ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング