は鋸《のこぎり》で挽《ひ》く所爲《せゐ》だ、)と考《かんが》へて、柳《やなぎ》の葉《は》が痛《いた》むといつたお品《しな》の言《ことば》が胸《むね》に浮《うか》ぶと、又《また》木屑《きくづ》が胸《むね》にかゝつた。
與吉《よきち》は薄暗《うすぐら》い中《なか》に居《ゐ》る、材木《ざいもく》と、材木《ざいもく》を積上《つみあ》げた周圍《しうゐ》は、杉《すぎ》の香《か》、松《まつ》の匂《にほひ》に包《つゝ》まれた穴《あな》の底《そこ》で、目《め》を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》つて、跪《ひざまづ》いて、鋸《のこぎり》を握《にぎ》つて、空《そら》ざまに仰《あふ》いで見《み》た。
樟《くすのき》の材木《ざいもく》は斜《なゝ》めに立《た》つて、屋根裏《やねうら》を漏《も》れてちら/\する日光《につくわう》に映《うつ》つて、言《い》ふべからざる森嚴《しんげん》な趣《おもむき》がある。この見上《みあ》ぐるばかりな、これほどの丈《たけ》のある樹《き》はこの邊《あたり》でつひぞ見《み》た事《こと》はない、橋《はし》の袂《たもと》の銀杏《いてふ》は固《もと》より、岸《きし》の柳《や
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