《じゆんさ》が入《はひ》るのも、けたゝましく郵便脚夫《いうびんきやくふ》が走込《はしりこ》むのも、烏《からす》が鳴《な》くのも、皆《みな》何《なん》となく土地《とち》の末路《まつろ》を示《しめ》す、滅亡《めつばう》の兆《てう》であるらしい。
けれども、滅《ほろ》びるといつて、敢《あへ》て此《こ》の部落《ぶらく》が無《な》くなるといふ意味《いみ》ではない、衰《おとろ》へるといふ意味《いみ》ではない、人《ひと》と家《いへ》とは榮《さか》えるので、進歩《しんぽ》するので、繁昌《はんじやう》するので、やがて其《その》電柱《でんちう》は眞直《まつすぐ》になり、鋼線《はりがね》は張《はり》を持《も》ち、橋《はし》がペンキ塗《ぬり》になつて、黒塀《くろべい》が煉瓦《れんぐわ》に換《かは》ると、蛙《かはづ》、船蟲《ふなむし》、そんなものは、不殘《のこらず》石灰《いしばひ》で殺《ころ》されよう。即《すなは》ち人《ひと》と家《いへ》とは、榮《さか》えるので、恁《かゝ》る景色《けしき》の俤《おもかげ》がなくならうとする、其《そ》の末路《まつろ》を示《しめ》して、滅亡《めつばう》の兆《てう》を表《あら》はす
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