《なかぞら》に流星《りうせい》の如《ごと》き尾《を》を引《ひ》いたが、※[#「火+發」、717−14]《ぱつ》と火花《ひばな》が散《ち》つて、蒼《あを》くして黒《くろ》き水《みづ》の上《うへ》へ亂《みだ》れて落《お》ちた。
 屹《きつ》と見《み》て、
「お柳《りう》、」
「え、」
「およそ世《よ》の中《なか》にお前《まへ》位《ぐらゐ》なことを、私《わたし》にするものはない。」
 と重々《おも/\》しく且《か》つ沈《しづ》んだ調子《てうし》で、男《をとこ》は肅然《しゆくぜん》としていつた。
「女房《にようばう》ですから、」
 と立派《りつぱ》に言《い》ひ放《はな》ち、お柳《りう》は忽《たちま》ち震《ふる》ひつくやうに、岸破《がば》と男《をとこ》の膝《ひざ》に頬《ほゝ》をつけたが、消入《きえい》りさうな風采《とりなり》で、
「そして同年紀《おなじとし》だもの。」
 男《をとこ》は其《その》頸《うなじ》を抱《だ》かうとしたが、フト目《め》を反《そ》らす水《みづ》の面《おも》、一|點《てん》の火《ひ》は未《ま》だ消《き》えないで殘《のこ》つて居《ゐ》たので。驚《おどろ》いて、じつと見《み》れば
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