て聞《き》くことの出來《でき》ないので、押懸《おしか》けて行《い》つて、無理《むり》に其《そ》の材木《ざいもく》に葉《は》の繁《しげ》つた處《ところ》をお目《め》に懸《か》けようと思《おも》つて連出《つれだ》して來《き》たんです。
あなた分《わか》つたでせう、今《いま》あの木挽小屋《こびきごや》の前《まへ》を通《とほ》つて見《み》たでせう。疑《うたが》ふもんぢやありませんよ。人《ひと》の思《おもひ》ですわ、眞暗《まつくら》だから分《わか》らないつてお疑《うたぐ》ンなさるのは、そりや、あなたが邪慳《じやけん》だから、邪慳《じやけん》な方《かた》にや分《わか》りません。」
又《また》默《だま》つて俯向《うつむ》いた、しばらくすると顏《かほ》を上《あ》げて斜《なゝ》めに卷煙草《まきたばこ》を差寄《さしよ》せて、
「あい。」
「…………」
「さあ、」
「…………」
「邪慳《じやけん》だねえ。」
「…………」
「えゝ!、要《い》らなきや止《よ》せ。」
といふが疾《はや》いか、ケンドンに投《はふ》り出《だ》した、卷煙草《まきたばこ》の火《ひ》は、ツツツと橢圓形《だゑんけい》に長《なが》く中空
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