朱日記
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)小使《こづかい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)職員室|真中《まんなか》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「火+發」、463−5]
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一
「小使《こづかい》、小ウ使。」
程もあらせず、……廊下を急いで、もっとも授業中の遠慮、静《しずか》に教員控所の板戸の前へ敷居越に髯面《ひげづら》……というが頤《あご》頬《ほお》などに貯えたわけではない。不精で剃刀《かみそり》を当てないから、むじゃむじゃとして黒い。胡麻塩頭《ごましおあたま》で、眉の迫った渋色の真正面《まっしょうめん》を出したのは、苦虫と渾名《あだな》の古物《こぶつ》、但し人の好《い》い漢《おとこ》である。
「へい。」
とただ云ったばかり、素気《そっけ》なく口を引結んで、真直《まっすぐ》に立っている。
「おお、源助か。」
その職員室|真中《まんなか》の大卓子《おおテエブル》、向側の椅子《いす》に
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