取舵
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)厄介《やっかい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)善光寺|詣《もうで》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「穴かんむり/目」、第3水準1−89−50]然《がっくり》と
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         上

「こりゃどうも厄介《やっかい》だねえ。」
 観音丸《かんのんまる》の船員は累々《やつやつ》しき盲翁《めくらおやじ》の手を執《と》りて、艀《はしけ》より本船に扶乗《たすけの》する時、かくは呟《つぶや》きぬ。
 この「厄介《やっかい》」とともに送られたる五七人の乗客を載了《のせおわ》りて、観音丸《かんのんまる》は徐々《じょじょ》として進行せり。
 時に九月二日午前七時、伏木港《ふしきこう》を発する観音丸《かんのんまる》は、乗客の便《べん》を謀《はか》りて、午後六時までに越後直江津《えちごなおえつ》に達し、同所《どうしょ》を発する直江津鉄道の最終列車に間に合《あわ》すべき予定なり。
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