壇上には弥陀《みだ》、観音《かんおん》、勢至《せいし》の三尊《さんぞん》、二天《にてん》、六地蔵《ろくじぞう》が安置され、壇の中は、真中に清衡《きよひら》、左に基衡《もとひら》、右に秀衡《ひでひら》の棺《かん》が納まり、ここに、各|一口《ひとふり》の剣《つるぎ》を抱《いだ》き、鎮守府将軍《ちんじゅふしょうぐん》の印《いん》を帯び、錦袍《きんぽう》に包まれた、三つの屍《しかばね》がまだそのままに横《よこた》わっているそうである。
 雛芥子《ひなげし》の紅《くれない》は、美人の屍より開いたと聞く。光堂は、ここに三個の英雄が結んだ金色《こんじき》の果《このみ》なのである。
 謹《つつし》んで、辞して、天界一叢《てんかいいっそう》の雲を下りた。
 階《きざはし》を下りざまに、見返ると、外囲《そとがこい》の天井裏に蜘蛛《くも》の巣がかかって、風に軽く吹かれながら、きらきらと輝くのを、不思議なる塵《ちり》よ、と見れば、一粒《いちりゅう》の金粉の落ちて輝くのであった。
 さて経蔵《きょうぞう》を見よ。また弥《いや》が上に可懐《なつかし》い。
 羽目《はめ》には、天女――迦陵頻伽《かりょうびんが》が髣
前へ 次へ
全27ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング