紫陽花
泉鏡花

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)其《その》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)年|少《わか》き

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)[#「目+爭」、第3水準1−88−85、28−8]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)きら/\
−−

     一

 色青く光ある蛇、おびたゞしく棲めればとて、里人は近よらず。其《その》野社《のやしろ》は、片眼の盲ひたる翁ありて、昔より斉眉《かしず》けり。
 其《その》片眼を失ひし時一たび見たりと言ふ、几帳の蔭に黒髪のたけなりし、それぞ神なるべき。
 ちかきころ水無月中旬、二十日余り照り続きたる、けふ日ざかりの、鼓子花《ひるがお》さへ草いきれに色褪せて、砂も、石も、きら/\と光を帯びて、松の老木《おいき》の梢より、糸を乱せる如き薄き煙の立ちのぼるは、木精《こだま》とか言ふものならむ。おぼろ/\と霞むまで、暑き日の静さは夜半にも増して、眼もあて
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