下げ]
小児等《こどもら》しばらく逡巡《しゅんじゅん》す。画工の機嫌よげなるを見るより、一人は、画工の背《せなか》を抱《いだ》いて、凧を煽る真似す。一人は駈出《かけだ》して距離を取る。其の一人《いちにん》。
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小児三 やあ、大凧《おおだこ》だい、一人ぢや重い。
小児四 うん、手伝つて遣ら。(と独楽《こま》を懐《ふところ》にして、立並《たちなら》ぶ)――風吹け、や、吹け。山の風吹いて来い。――(同音に囃《はや》す。)
画工 (あふりたる児《こ》の手を離るゝと同時に、大手《おおで》を開《ひら》いて)恁《こ》う成りや凧絵だ、提灯屋《ちょうちんや》だ。そりや、しやくるぞ、水|汲《く》むぞ、べつかつこだ。
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小児等《こどもら》の糸を引いて駈《かけ》るがまゝに、ふら/\と舞台を飛廻《とびまわ》り、やがて、樹根《きのね》に※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と成りて、切なき呼吸《いき》つく。
暮色《ぼしょく》到る。
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小児
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