りする、幽《かすか》な、しかし脈を打つて、血の通ふ、其の符牒《ふちょう》で、黙つて居て、暗号《あいず》が出来ると、何時《いつ》も奥様がおつしやるもんだから。――卓子《テエブル》さん(卓をたゝく)殊《こと》にお前さんは三《み》ツ脚《あし》で、狐狗狸《こっくり》さん、其のまゝだもの。活《い》きてるも同じだと思ふから、つい、お話をしたんだわ。しかし、うつかりして、少々大事なことを饒舌《しゃべ》つたんだから、お前さん聞いたばかりにして置いておくれ。誰にも言つては不可《いけな》いよ。一寸《ちょいと》、注《つ》いだ酒を何《ど》うしよう。ああ、いゝ事がある。(酔倒《よいたお》れたる画工に近づく。後の烏一ツ、同じく近寄りて、画工の項《うなじ》を抱《いだ》いて仰向《あおむ》けにす。)
酔《よっ》ぱらひさん、さあ、冷水《おひや》。
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画工 (飲みながら、現《うつつ》にて)あゝ、日が出た、が、俺は暗夜《やみ》だ。(其まゝ寝返る。)
初の烏 日が出たつて――赤い酒から、私の此の烏を透かして、まあ。――画《え》に描《か》いた太陽《おひさま》の
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