よ。
小児五 重いんだらうか。
小児一 何だ、引越《ひっこし》かなあ。
小児二 構ふもんか、何だつて。
小児三 御覧よ、脊《せな》よりか高い、障子見たやうなものを背負《しょ》つてるから、凧《たこ》が歩行《ある》いて来るやうだ。
小児四 糸をつけて揚げる真似エして遣《や》らう。
小児五 遣れ/\、おもしろい。
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凧を持つたのは凧を上げ、独楽《こま》を持ちたるは独楽を廻す。手にものなき一人《いちにん》、一方に向ひ、凧の糸を手繰《たぐ》る真似して笑ふ。
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画工 (枠張《わくばり》のまゝ、絹地《きぬじ》の画《え》を、やけに紐《ひも》からげにして、薄汚《うすよご》れたる背広の背に負ひ、初冬《はつふゆ》、枯野の夕日影にて、あか/\と且《か》つ寂《さみ》しき顔。酔《よ》へる足どりにて登場)……落第々々、大落第《おおらくだい》。(ぶらつく体を杖《ステッキ》に突掛《つっか》くる状《さま》、疲切《つかれき》つたる樵夫《きこり》の如し。しばらくして、叫ぶ)畜生《ちくしょう》、状《ざま》を見やがれ。
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