#ここから4字下げ]
青山、葉山、羽黒の権現さん
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
小児等《こどもら》唄いながら画工の身の周囲《まわり》を廻《めぐ》る。環の脈を打って伸び且つ縮むに連れて、画工、ほとんど、無意識なるがごとく、片手また片足を異様に動かす。唄う声、いよいよ冴《さ》えて、次第に暗くなる。
時に、樹の蔭より、顔黒く、嘴《くちばし》黒く、烏《からす》の頭《かしら》して真黒《まっくろ》なるマント様《よう》の衣《きぬ》を裾《すそ》まで被《かぶ》りたる異体のもの一個|顕《あらわ》れ出で、小児《こども》と小児の間に交《まじ》りて斉《ひと》しく廻る。
地に踞《うずくま》りたる画工、この時、中腰に身を起して、半身を左右に振って踊る真似す。
続いて、初《はじめ》の黒きものと同じ姿したる三個、人の形の烏。樹蔭より顕れ、同じく小児等の間に交って、画工の周囲を繞《めぐ》る。
小児等は絶えず唄う。いずれもその怪《あやし》き物の姿を見ざる趣なり。あとの三羽の烏出でて輪に加わる頃より、画工全く立上り、我を忘れたる状《さま》して踊り出《いだ》す。初手の烏もともに、就中《なかんずく》、後《あと
前へ 次へ
全33ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング