二 構うもんか、何だって。
小児三 御覧よ、脊《せな》よりか高い、障子見たようなものを背負ってるから、凧《たこ》が歩行《ある》いて来るようだ。
小児四 糸をつけて揚げる真似《まね》エしてやろう。
小児五 遣れ遣れ、おもしろい。
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凧を持ったのは凧を上げ、独楽《こま》を持ちたるは独楽を廻す。手にものなき一人《いちにん》、一方に向い、凧の糸を手繰る真似して笑う。
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画工 (枠張《わくばり》のまま、絹地の画《え》を、やけに紐《ひも》からげにして、薄汚れたる背広の背に負い、初冬《はつふゆ》、枯野の夕日影にて、あかあかと且つ寂《さみ》しき顔。酔える足どりにて登場)……落第々々、大落第。(ぶらつく体を杖《ステッキ》に突掛《つッか》くる状《さま》、疲切ったる樵夫《きこり》のごとし。しばらくして、叫ぶ)畜生、状《ざま》を見やがれ。
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声に驚き、且つ活《い》ける玩具《おもちゃ》の、手許《てもと》に近づきたるを見て、糸を手繰りたる小児《こども
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