》、芸人を引張込《ひっぱりこ》んで雲井を吹かす、酒を飲む、骨牌《かるた》を弄《もてあそ》ぶ、爪弾《つまびき》を遣る、洗髪《あらいがみ》の意気な半纏着《はんてんぎ》で、晩方からふいと家《うち》を出ては帰らないという風。
 滝太郎の祖父《じい》は母親には継父であったが、目を閉じ、口を塞《ふさ》いでもの言わず、するがままにさせておくと、瞬く内に家も地所も人手に渡った。謂《い》うまでもなく四人の口を過ごしかねるようになったので、大根畠に借家して半歳ばかり居食《いぐい》をしたが、見す見す体に鉋《かんな》を懸けて削り失《な》くすようなものであるから、近所では人目がある、浅草へ行って蔵前辺に屋台店でも出してみよう、煮込おでんの汁《つゆ》を吸っても、渇《かつ》えて死ぬには増《まし》だという、祖父の繰廻しで、わずか残った手廻《てまわり》の道具を売って動《うごき》をつけて、その俵町の裏長屋へ越して、祖父は着馴《きな》れぬ半纏被《はんてんぎ》に身を窶《やつ》して、孫の手を引きながら佐竹ヶ原から御徒町辺《おかちまちあたり》の古道具屋を見歩いたが、いずれも高直《たかね》[#「高直《たかね》」はママ]で力及ばず、
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