っと大目に見てくれないじゃあ困りますね。」と情《なさけ》なそうにいった。
「どうするんかい、」
「何さ、どうするッて。」
「貴公、どこへしょびくんじゃ、あの美人をよ、巧く遣りおるの。うう、」と団栗目を細うして、変な声で、えへ、えへ、えへ。
「しょびくたって何も君、まったくさ、お嬢さんが用があるそうだ。」
「嘘を吐《つ》けい、誰じゃと思うか、ああ。貴公目下のこの行為は、公の目から見ると拐帯《かどわかし》じゃよ、詐偽《さぎ》じゃな。我輩警察のために棄置かん、直ちに貴公のその額へ、白墨で、輪を付けて、交番へ引張《ひっぱ》るでな、左様《さよ》思え、はははは。」
「串戯《じょうだん》をいっちゃあ不可《いけ》ません。」
「何、構わず遣るぞ。癪《しゃく》じゃ、第一、あの美人は、私《わし》が前《さき》へ目を着けて、その一挙一動を探って、兄じゃというのが情男《いろおとこ》なことまで貴公にいうてやった位でないかい。考えてみい、いかに慇懃《いんぎん》を通じようといって、貴公ではと思うで、なぶる気で打棄《うっちゃ》っておいたわ。今夜のように連出されては、こりゃならんわい。向面《むこうづら》へ廻って断乎として妨
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