ございます。」

       二十六

「心得てるさ、ちっとも気あつかいのいらないように万事取計らうから可いよ。向うが空屋《あきや》で両隣が畠《はたけ》でな、聾《つんぼ》の婆さんが一人で居るという家が一軒、……どうだね、」と物凄《ものすご》いことをいう。この紳士は権柄《けんぺい》ずくにおためごかしを兼ねて、且つ色男なんだから極めて計らいにくいのであります。
 勇美子の用でも何でもない。大方こんなこととは様子にも悟っていたが、打着けに言われたので、お雪も今更ぎょっとした。
「路《みち》も遠うございますから、晩《おそ》くなりましょう、直ぐあの、お邸の方へ参っちゃあ不可《いけ》ませんか。」
「何、遠慮することはないさ。」
 これだもの。…………
「いいえ、」といったばかり。お雪は遁帰《にげかえ》る機掛《きっかけ》もなし、声を立てる数《すう》でもなし、理窟をいう分《わけ》にも行《ゆ》かず、急にお腹《なか》が痛むでもない。手もつけられねば、ものも言われず。
 径《こみち》ややその半《なかば》を過ぎて、総曲輪に近くなると、島野は莞爾《にこや》かに見返って、
「どうだ、御飯でも食べて、それからその
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