わるずい》する、島野はますます憤って、口も利かず。
(無言なり。)
「お晩《おそ》うございましたのね。」と何やらつかぬことを言って、為方《しかた》なしにお雪は微笑《ほほえ》む。
「お邪魔をしましたな。」という声ぎっすりとして、車の輪の軋《きし》むがごとく、島野は決する処あって洋杖《ステッキ》を持換えた。
「お前ねえ、」
 邪気|自《おのず》から膚《はだえ》を襲うて、ただは済みそうにもない、物ありげに思い取られるので、お雪は薄気味悪く、易《やす》からぬ色をして、
「はい。」
「あのな、」と重々しく言い懸けて、じろじろと顔を見る。
「どうぞ、まあ、」
「入っちゃあおられん。」
「どちらへか。」
「なあに。」
「お急ぎでございますか。」と畳に着く手も定まらない。
「ちょっと出てもらおう、」
「え、え。」
「用があるんだ。」

       二十四

「後を頼むとって、お前様《めえさま》、どこさ行《ゆ》かっしゃる。」
 ちょいとどうぞと店前《みせさき》から声を懸けられたので、荒物屋の婆《ばば》は急いで蚊帳を捲《まく》って、店へ出て、一枚着物を着換えたお雪を見た。繻子《しゅす》の帯もきりりとして
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