も彼《か》も思切って、わざと新聞なぞは耳に入れないように勤めているから、そりゃちっとも知らずに居た、御無事に。……そうかい、けれども慶造、私はお目にかかられまい。」と額に手を翳《かざ》して目を蔽《おお》うたのである。
「なぜでございます、目をお損いになりましたせいでござりますか。」
「むむ、何それもあるけれども、私が考《かんがえ》で、家を売り、邸を売り、父様《おとっさん》がいらっしゃる処も失くなしたし。」
「それは御心配ござりません、貴下《あなた》が放蕩《ほうとう》でというではなし、御望《おのぞみ》がおあり遊ばしたとはいえ、大旦那様が迷惑をお懸け遊ばした方々の債主へ、少しずつお分けになったのでござりますもの、拓はよくしたとおっしゃったのを、私《わたくし》が直《じき》に承わりましてござります。」
「そして今どこにいらっしゃるんだな。」
「へい、組合の方でお引取申しました。海でなり、陸でなり、一同旗上げをいたします迄はしばらくおかくれでござります。貴方もこういう処はお立退《たちのき》になって、それへ合体が宜《よろ》しゅうござりましょう。ちょうどこの国へ参りがけに加州を通りまして、あすこであ
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