、どたりと倒れたのは多磨太である。白墨狂士は何とかしけむ、そのままどたどたと足を挙げて、苦痛に堪えざる身悶《みもだえ》して、呻吟《うめ》く声|吠《ほ》ゆるがごとし。
鍵屋の一群《ひとむれ》はこれを見て棄て置かれず、島野に義作がついて店前《みせさき》へ出向いて、と見ると、多磨太は半面べとり血になって、頬から咽喉《のど》へかけ、例の白薩摩《しろさつま》の襟を染めて韓紅《からくれない》。
「君、どうしたんです。」と島野は驚いたが、薄気味の悪さうに密《そっ》と手をとって、眉を顰《ひそ》めた。
鍵屋では及腰《およびごし》に向うを伺い、振返って道が、
「あれ、怪我をしておりますようです、どうしたんでございましょう。」
勇美子も夜会結びの鬢《びんずら》を吹かせ、雨に頬を打たせて厭《いと》わず、掛茶屋の葦簀《よしず》から半ば姿をあらわして、
「石滝から来たのじゃあなくって。滝さんとお雪はどうしたろうね、」とこれは心も心ならない。道はずッと出て手招《てまねぎ》をした。
「義作さん、おおい、ちょいとお出《いで》よ、お出よ。」
「へッ、」と云って、威勢よく飛んで帰る。
「何だね、どうしたのさ、あれ大変
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