のお庇《かげ》なんで、へい。」
「ちょいとどうなすったの、滝太郎さんは。」と姫は四辺《あたり》を見て、御意遊ばす。
「お馬はあすこに居るじゃあないかね。」
「お嬢様、何ですか、その事でこちらへお越しなんですか。」
「何あのお雪のことなの。」
「姉さん、花売なんだがね、十八九でちょっとそういった風な女を見当りはしなかったかい。」
 お道に聞かれて米が答えようとするのを、ちゃっと引取ったのは今両人が鍵屋の女客に引付けられて、店から出るのに気を揉《も》んで、あとからついて出て立っている蔵屋の女《むすめ》。
「その人なら、存じております、今朝ほどでございました。」
「私だって知ってます。」と、米はつんとして倉を流※[#「目+分」、第3水準1−88−77]《じろり》。

       四十七

「貴方《あなた》の黒百合を採りたいって、とうとう石滝へ入ったそうです。」と、島野が引取って慎重にこれを伝える。
 勇美子はその瞳を屹《きっ》と凝らしたが、道は聞くと斉《ひと》しく、顔の色を変えた。
「お嬢様、どういたしましょう。」
「困ったね、少しお待ち、あの、お前だち誰も中の様子を知らないかい。」
「は
前へ 次へ
全199ページ中151ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング