。滝さん、お前さんの目つきと、その心なら、ここにある印は不残《のこらず》お前さんの手下になります、頼もしいじゃあないか。」
「うむ、」といって、重瞳《ちょうどう》異相の悪少は眠くないその左の目を擦《こす》った。
「加州は百万石の城下だからまた面白い事もあろう、素晴しい事が始まったら風の便《たより》にお聞きなさいよ。それじゃあ、あの随分ねえ。」
「気をつけて行きねえ。」
「あい、」
「………」
「おさらばだよ。」
その効々《かいがい》しい、きりりとして裾短《すそみじか》に、繻子《しゅす》の帯を引結んで、低下駄《ひくげた》を穿《は》いた、商売《あきない》ものの銀流を一包にして桐油合羽《とうゆがっぱ》を小さく畳んで掛けて、浅葱《あさぎ》の切《きれ》で胴中《どうなか》を結えた風呂敷包を手に提げて、片手に蝙蝠傘《こうもりがさ》を持った後姿。飄然《ひょうぜん》として橋を渡り去ったが、やがて中ほどでちょっと振返って、滝太郎を見返って、そのまま片褄《かたづま》を取って引上げた、白い太脛《ふくらはぎ》が見えると思うと、朝靄《あさもや》の中に見えなくなった。
やがて、夜が明け放れた時、お兼は新庄《しん
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