こわ》しだから、ああ、浅草で別れた姉やぐらいなのがあったらと、しょッちゅう思っていねえこたあなかったよ。おいら一人も友達は拵《こせ》えねえんだ、総曲輪でお前に、滝やッて言われた時にゃあ、どんなに喜んだと思うんだ、よく見て誉《ほ》めてくんねえな。」
ずッと寄ると袖を開いて、姉御は何と思ったか、滝太郎の頸《うなじ》を抱いて、仰向《あおむき》の顔を、
「どれ、」
燈《ともし》は捧げられた、二人はつくづくと目を見合せたのであった。お兼は屹《きっ》と打守って、
「滝さん、お前さんは自分の目がどんなに立派なものだか知ってるかね。」
三十八
「お前さんの母様《おっかさん》が亡《なく》なんなすった時も、お前にゃあ何でもしたいことが出来るからってとお言いだったと聞いちゃあいたがね、まあ、随分思切ったこったね。何かい、ここで寝ることがあるのかい。」
「ああ、あの荒物屋の媼《ばば》っていうのが、それが、何よ、その清全寺で仏像の時の媼なんだから、おいらにゃあ自由が利くんだ。邸《やしき》からじゃあ面倒だからね、荒物屋を足溜《あしだまり》にしちゃあ働きに出るのよ。それでも何や彼《か》や出入に
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