ぞうひん》は一個々々《ひとつびとつ》心あって物を語らんとするがごとく、響に触れ、燈《ともし》に映って不残《のこらず》動くように見えて、一種言うべからざる陰惨の趣がある。お兼はじっと見て物をも言わぬ、その一言も発しないのを、感に耐えたからだとも思ったろう。滝太郎は極めて得意な様子でお兼の顔を見遣りながら、件《くだん》のリボン飾《かざり》を指《ゆびさ》して、
「これがね、一番新しいんだぜ。ほら、こないだ総曲輪で、姉やに掴《つか》まった時ね、あの昼間だ、あの阿魔、知事の娘のせいでもあるまいが、何だか取難《とりにく》かったよ、夜店をぶらついてる奴等の簪《かんざし》を抜くたあなぜか勝手が違うんだ。でもとうとう遣ッつけた、可い心持だった、それから、」
 と言って飜《ひるがえ》って向うへ廻って、一個《ひとつ》の煙草入を照らして見せ、
「これが最初《はじめて》だ、富山へ来てから一番|前《さき》に遣ったのよ。それからね、見ねえ。」
 甚しいかな、古色を帯びた観世音の仏像一体。
「これには弱ったんだ、清全寺ッて言う巨寺《おおでら》の秘仏だっさ。去年の夏頃開帳があって、これを何だ、本堂の真中《まんなか》へ持
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