ってごたごたしてるので、つい見はぐしたよ、どうしたろう。」
「何か、あの花売の別嬪《べっぴん》か。」
「高慢なことをいうねえ、花売だか何だか。」
「うむ、ありゃもう疾《とっ》くに帰った。俺《おい》ら可《い》いてことよと受合って来たけれども、不安心だと見えてあとからついて来たそうで、老人《としより》は苦労性だ。挨拶《あいさつ》だの、礼だの、誰方《どなた》だのと、面倒|臭《くせ》えから、ちょうど可い、連立《つれだ》たして、さっさと帰しちまった。」
「何しろ可《よ》かったねえ。喧嘩になって、また指環でも揮廻《ふりまわ》しはしないかと、私ははらはらして見ていたんだよ。ほんとにお前さん、あれを滅多に使っちゃあ悪うござんす。」
「蝮《まむし》の針だ、大事なものだ。人に見せて堪《たま》るもんか、そんなどじなこたあしやしないよ。」
「いかがですか、こないだ店前《みせさき》へ突出したお手際では怪しいもんだよ。多勢居る処じゃあないかね。」
「誰がまた姉や、お前《めえ》だと思うもんか。あの時はどきりとした、ほんとうだ、縛られるかと思った。」
「だからさ、私に限らず、どこにどんな者が居ないとも限らないからね、
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