》めば美しい木《こ》の実《み》も落つる、袖《そで》を翳《かざ》せば雨も降るなり、眉《まゆ》を開けば風も吹くぞよ。
しかもうまれつきの色好み、殊にまた若いのが好《すき》じゃで、何かご坊にいうたであろうが、それを実《まこと》としたところで、やがて飽《あ》かれると尾が出来る、耳が動く、足がのびる、たちまち形が変ずるばかりじゃ。
いややがて、この鯉を料理して、大胡坐《おおあぐら》で飲む時の魔神の姿が見せたいな。
妄念《もうねん》は起さずに早うここを退《の》かっしゃい、助けられたが不思議なくらい、嬢様別してのお情じゃわ、生命冥加《いのちみょうが》な、お若いの、きっと修行をさっしゃりませ。)とまた一ツ背中を叩《たた》いた、親仁《おやじ》は鯉を提《さ》げたまま見向きもしないで、山路《やまじ》を上《かみ》の方。
見送ると小さくなって、一座の大山《おおやま》の背後《うしろ》へかくれたと思うと、油旱《あぶらひでり》の焼けるような空に、その山の巓《いただき》から、すくすくと雲が出た、滝の音も静まるばかり殷々《いんいん》として雷《らい》の響《ひびき》。
藻抜《もぬ》けのように立っていた、私《わし》が
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