が見らるる通り、またあの白痴《ばか》につきそって行届《ゆきとど》いた世話も見らるる通り、洪水の時から十三年、いまになるまで一日もかわりはない。
 といい果てて親仁《おやじ》はまた気味の悪い北叟笑《ほくそえみ》。
(こう身の上を話したら、嬢様を不便《ふびん》がって、薪《まき》を折ったり水を汲《く》む手助けでもしてやりたいと、情が懸《かか》ろう。本来の好心《すきごころ》、いい加減な慈悲《じひ》じゃとか、情じゃとかいう名につけて、いっそ山へ帰りたかんべい、はて措《お》かっしゃい。あの白痴殿《ばかどの》の女房になって世の中へは目もやらぬ換《かわり》にゃあ、嬢様は如意《にょい》自在、男はより取って、飽《あ》けば、息をかけて獣《けもの》にするわ、殊にその洪水以来、山を穿《うが》ったこの流は天道様《てんとうさま》がお授けの、男を誘《いざな》う怪《あや》しの水、生命《いのち》を取られぬものはないのじゃ。
 天狗道《てんぐどう》にも三熱の苦悩《くのう》、髪が乱れ、色が蒼ざめ、胸が痩《や》せて手足が細れば、谷川を浴びると旧《もと》の通り、それこそ水が垂るばかり、招けば活《い》きた魚《うお》も来る、睨《にら
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