二十四

「翌日また正午頃《ひるごろ》、里近く、滝のある処で、昨日《きのう》馬を売りに行った親仁《おやじ》の帰りに逢《お》うた。
 ちょうど私《わし》が修行に出るのを止《よ》して孤家《ひとつや》に引返して、婦人《おんな》と一所《いっしょ》に生涯《しょうがい》を送ろうと思っていたところで。
 実を申すとここへ来る途中でもその事ばかり考える、蛇の橋も幸《さいわい》になし、蛭《ひる》の林もなかったが、道が難渋《なんじゅう》なにつけても、汗が流れて心持が悪いにつけても、今更行脚《いまさらあんぎゃ》もつまらない。紫《むらさき》の袈裟《けさ》をかけて、七堂伽藍《しちどうがらん》に住んだところで何ほどのこともあるまい、活仏様《いきぼとけさま》じゃというて、わあわあ拝まれれば人いきれで胸が悪くなるばかりか。
 ちとお話もいかがじゃから、さっきはことを分けていいませなんだが、昨夜《ゆうべ》も白痴《ばか》を寐《ね》かしつけると、婦人《おんな》がまた炉のある処へやって来て、世の中へ苦労をしに出ようより、夏は涼しく、冬は暖い、この流《ながれ》に一所に私《わたし》の傍《そば》においでなさいというてく
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