何でございますね、あとでお食《あが》んなさい、お客様じゃあありませんか。)
 白痴《ばか》は情ない顔をして口を曲《ゆが》めながら頭《かぶり》を掉《ふ》った。
(厭《いや》? しょうがありませんね、それじゃご一所《いっしょ》に召しあがれ。貴僧《あなた》、ご免《めん》を蒙《こうむ》りますよ。)
 私《わし》は思わず箸《はし》を置いて、
(さあどうぞお構いなく、とんだご雑作《ぞうさ》を頂きます。)
(いえ、何の貴僧《あなた》。お前さん後《のち》ほどに私と一所にお食べなさればいいのに。困った人でございますよ。)とそらさぬ愛想《あいそ》、手早くおなじような膳を拵《こしら》えてならべて出した。
 飯のつけようも効々《かいがい》しい女房《にょうぼう》ぶり、しかも何となく奥床《おくゆか》しい、上品な、高家《こうけ》の風がある。
 白痴《あほう》はどんよりした目をあげて膳の上を睨《ね》めていたが、
(あれを、ああ、ああ、あれ。)といってきょろきょろと四辺《あたり》を※[#「目」+「句」 154−6]《みまわ》す。
 婦人《おんな》はじっと瞻《みまも》って、
(まあ、いいじゃないか。そんなものはいつでも食
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