《がけ》から横《よこ》に宙《ちゆう》をひよいと、背後《うしろ》から婦人《をんな》の背中《せなか》へぴつたり。
裸体《はだか》の立姿《たちすがた》は腰《こし》から消《き》えたやうになつて、抱《だき》ついたものがある。
(畜生《ちくしやう》お客様《きやくさま》が見《み》えないかい。)
と声《こゑ》に怒《いかり》を帯《お》びたが、
(お前達《まへだち》は生意気《なまいき》だよ、)と激《はげ》しくいひさま、腋《わき》の下《した》から覗《のぞ》かうとした件《くだん》の動物《どうぶつ》の天窓《あたま》を振返《ふりかへ》りさまにくらはしたで。
キツヽヽといふて奇声《きせい》を放《はな》つた、件《くだん》の小坊主《こばうず》は其《その》まゝ後飛《うしろと》びに又《また》宙《ちゆう》を飛《と》んで、今《いま》まで法衣《ころも》をかけて置《お》いた枝《えだ》の尖《さき》へ長《なが》い手《て》で釣《つる》し下《さが》つたと思《おも》ふと、くるりと釣瓶覆《つるべがへし》に上《うへ》へ乗《の》つて、其《それ》なりさら/\と木登《きのぼり》をしたのは、何《なん》と猿《さる》ぢやあるまいか。
枝《えだ》から枝
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