》に濡《ぬ》れて黒《くろ》い、滑《なめら》かな、大《おほき》な石《いし》へ蒼味《あをみ》を帯《お》びて透通《すきとほ》つて映《うつ》るやうに見《み》えた。
するとね、夜目《よめ》で判然《はつきり》とは目《め》に入《い》らなんだが地体《ぢたい》何《なん》でも洞穴《ほらあな》があると見《み》える。ひら/\と、此方《こちら》からもひら/\と、ものゝ鳥《とり》ほどはあらうといふ大蝙蝠《おほかはほり》が目《め》を遮《さへぎ》つた。
(あれ、不可《いけな》いよ、お客様《きやくさま》があるぢやないかね。)
不意《ふい》を打《う》たれたやうに叫《さけ》んで身悶《みもだえ》をしたのは婦人《をんな》。
(何《ど》うかなさいましたか、)最《も》うちやんと法衣《ころも》を着《き》たから気丈夫《きぢやうぶ》に尋《たづ》ねる。
(否《いゝえ》、)
といつたばかりで極《きまり》が悪《わる》さうに、くるりと後向《うしろむき》になつた。
其時《そのとき》小犬《こいぬ》ほどな鼠色《ねづみいろ》の小坊主《こばうず》が、ちよこ/\とやつて来《き》て、※[#「口+阿」、第4水準2−4−5]呀《あなや》と思《おも》ふと、崖
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