かり総体《そうたい》近《ちか》うござりますが、いや今時《いまどき》往来《わうらい》の出来《でき》るのぢやあござりませぬ。去年《きよねん》も御坊様《おばうさま》、親子連《おやこづれ》の順礼《じゆんれい》が間違《まちが》へて入《はい》つたといふで、はれ大変《たいへん》な、乞食《こじき》を見《み》たやうな者《もの》ぢやといふて、人命《じんめい》に代《かは》りはねえ、追《おツ》かけて助《たす》けべいと、巡査様《おまはりさま》が三|人《にん》、村《むら》の者《もの》が十二人《じふにゝん》、一|組《くみ》になつて之《これ》から押登《おしのぼ》つて、やつと連《つ》れて戻《もど》つた位《くらゐ》でがす。御坊様《おばうさま》も血気《けつき》に逸《はや》つて近道《ちかみち》をしてはなりましねえぞ、草臥《くたび》れて野宿《のじゆく》をしてからが此処《こゝ》を行《ゆ》かつしやるよりは増《まし》でござるに。はい、気《き》を着《つ》けて行《ゆ》かつしやれ。)
此処《こゝ》で百姓《ひやくしやう》に別《わか》れて其《そ》の川《かは》の石《いし》の上《うへ》を行《ゆか》うとしたが弗《ふ》と猶予《ためら》つたのは売薬《
前へ
次へ
全147ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング