た、前《まへ》にも申《まを》す、其《そ》の図面《づめん》をな、此処《こゝ》でも開《あ》けて見《み》やうとして居《ゐ》た処《ところ》。
(一寸《ちよいと》伺《うかゞ》ひたう存《ぞん》じますが、)
(これは、何《なん》でござりまする、)と山国《やまぐに》の人《ひと》などは殊《こと》に出家《しゆつけ》と見《み》ると丁寧《ていねい》にいつてくれる。
(いえ、お伺《うかゞ》ひ申《まを》しますまでもございませんが、道《みち》は矢張《やツぱり》これを素直《まツすぐ》に参《まゐ》るのでございませうな。)
(松本《まつもと》へ行《ゆ》かつしやる? あゝ/\本道《ほんだう》ぢや、何《なに》ね、此間《こなひだ》の梅雨《つゆ》に水《みづ》が出《で》てとてつもない川《かは》さ出来《でき》たでがすよ。)
(未《ま》だずつと何処《どこ》までも此《この》水《みづ》でございませうか。)
(何《なん》のお前様《まへさま》、見《み》たばかりぢや、訳《わけ》はござりませぬ、水《みづ》になつたのは向《むか》ふの那《あ》の藪《やぶ》までゞ、後《あと》は矢張《やツぱり》これと同一《おんなじ》道筋《みちすぢ》で山《やま》までは荷車《
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