》いの、聞《き》かつしやい、と言《いつ》て語《かた》り出《だ》した。後《あと》で聞《き》くと宗門《しうもん》名誉《めいよ》の説教師《せつけうし》で、六明寺《りくみんじ》の宗朝《しうてう》といふ大和尚《だいおしやう》であつたさうな。

         第三

「今《いま》に最《も》う一人《ひとり》此処《こゝ》へ来《き》て寝《ね》るさうぢやが、お前様《まへさま》と同国《どうこく》ぢやの、若狭《わかさ》の者《もの》で塗物《ぬりもの》の旅商人《たびあきうど》。いや此《こ》の男《をとこ》なぞは若《わか》いが感心《かんしん》に実体《じつてい》な好《い》い男《をとこ》。
 私《わし》が今《いま》話《はなし》の序開《じよびらき》をした其《そ》の飛騨《ひだ》の山越《やまごえ》を遣《や》つた時《とき》の、麓《ふもと》の茶屋《ちやゝ》で一|所《しよ》になつた富山《とやま》の売薬《ばいやく》といふ奴《やつ》あ、けたいの悪《わる》い、ねぢ/\した厭《いや》な壮佼《わかいもの》で。
 先《ま》づこれから峠《たうげ》に掛《かゝ》らうといふ日《ひ》の、朝早《あさはや》く、尤《もつと》も先《せん》の泊《とまり》はもの
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