、
(貴僧《あなた》、申《まを》せば何《なん》でも出来《でき》ませうと思《おも》ひますけれども、此人《このひと》の病《やまひ》ばかりはお医者《いしや》の手《て》でも那《あ》の水《みづ》でも復《なほ》りませなんだ、両足《りやうあし》が立《た》ちませんのでございますから、何《なに》を覚《おぼ》えさしましても役《やく》には立《た》ちません。其《それ》に御覧《ごらん》なさいまし、お辞義《じぎ》一《ひと》ツいたしますさい、あの通《とほり》大儀《たいぎ》らしい。
ものを教《おし》へますと覚《おぼ》えますのに嘸《さぞ》骨《ほね》が折《を》れて切《せつ》なうござんせう、体《からだ》を苦《くる》しませるだけだと存《ぞん》じて何《なんに》も為《さ》せないで置《お》きますから、段々《だん/″\》、手《て》を動《うご》かす働《はたらき》も、ものをいふことも忘《わす》れました。其《それ》でも那《あ》の、謡《うた》が唄《うた》へますわ。二ツ三ツ今《いま》でも知《し》つて居《を》りますよ。さあ御客様《おきやくさま》に一ツお聞《き》かせなさいましなね。)
白痴《ばか》は婦人《をんな》を見《み》て、又《また》私《わし》が顔《かほ》をぢろ/\見《み》て、人見知《ひとみしり》をするといつた形《かたち》で首《くび》を振《ふ》つた。」
第二十二
「左右《とかく》して、婦人《をんな》が、激《はげ》ますやうに、賺《すか》すやうにして勧《すゝ》めると、白痴《ばか》は首《くび》を曲《ま》げて彼《か》の臍《へそ》を弄《もてあそ》びながら唄《うた》つた。
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木曾《きそ》の御嶽山《おんたけさん》は夏《なつ》でも寒《さむ》い、
袷《あはせ》遣《や》りたや足袋《たび》添《そ》へて。
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(よく知《し》つて居《を》りませう、)と婦人《をんな》は聞澄《きゝすま》して莞爾《にツこり》する。
不思議《ふしぎ》や、唄《うた》つた時《とき》の白痴《ばか》の声《こゑ》は此《この》話《はなし》をお聞《き》きなさるお前様《まへさま》は固《もと》よりぢやが、私《わし》も推量《すゐりやう》したとは月鼈雲泥《げつべつうんでい》、天地《てんち》の相違《さうゐ》、節廻《ふしまは》し、あげさげ、呼吸《こきふ》の続《つゞ》く処《ところ》から、第《だい》一|其《そ》の清《きよ
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